瓦葺師の手で甦る暮らしの温もり
 
 
 
メインルーファー 岸根正己
昭和45年 茨城県生まれ  愛知県春日井市在住

「実家が瓦工事屋で、仕入先の問屋さんからの紹介もあり、瓦訓練校に行くために修行がてらこっちに来ていたんだけど、気が付けば故郷の栃木よりこっちでの生活の方が長くなってしまった」と語るのは岸根(38歳)である。
メインルーファー 岸根正己
「修行を始めた頃は大規模な分譲開発が沢山あって、どうやったら効率的な施行が出来るのかということを叩き込まれた。そんな忙しい時期だし、当時はまだまだ職人教育のための制度なんてきちんと出来上がっていたわけでもないから、とにかく自分で必死になって仕事を覚えた。昼休みなんて誰よりも早く昼飯を食べて、屋根に昇っては葺き方を確認したものだよ…(笑)。」

思い出に残る現場は「なんと言っても東京ディズニーシーの屋根工事!」。通常の我々の仕事ではいかに綺麗にきちんと葺き上げるかということを大前提としているが、この現場では数百年経った街並みを表現するために様々な工夫が施されている。「例えばヨーロッパなんかの場合だと建物が永く使われていて、一つの街の中でもある建物は250年程前に建てられたが、その隣は必ずしも同じ時代に建てられたわけではなく、100年後に建てられたもの、150年後に建てられたものと様々な年代に建てられた建物が点在している。当然それぞれの建物で経年数が違うわけだから、屋根や壁なんかの傷み方も色々である…。」

「これを全て同時に建てられる新築の現場でいかに表現するのか?街並みとしての統一感を持たせるためにモデルとしている地方に多く見られる同じ瓦を使いながら、わざとらしくならないように自然な形での経年変化を表現する。それはもう、とんでもない苦労の連続でしたね…。わざと老朽化して崩れ落ちそうな屋根に見えるようわざとうねった形の下地を組んで仮葺せをする。現場でのO.K.をもらった後で本施行に入るといった具合に…。今までにはない考え方や技術を身に付けることの出来た思い出深い現場ですね…。」

このように語る岸根だが、やはり屋根葺きの魅力はと尋ねると「それはもう間違いなくお寺のお堂を葺くこと」と答える。「やっぱり他では得られない遣り甲斐があるし、納得のいく屋根の線が出せるよう常に心掛けている」と語るそのその顔には、更なる高見を目指す決意が溢れている。
 
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